徹底解説 ワルツ全38曲



ショパンはワルツをどのように据えていたのでしょう。生涯に渡って書き続けられたワルツは他のジャンルに比べ、歳を重ねるごとに内容が充実し大がかりな作品へと変化していくといった具合でもなかったようです。ショパンはウィーンから、家族に宛てて「ウィーン人のいろいろな楽しみで一番有名なのは、食事のかたわらシュトラウスやランナーがワルツを奏することです。これはまさにウィーンの公衆の趣味がどんなに堕落しているかを物語っています」と嘆いています。はたしてショパンはワルツを嫌っていたのでしょうか?ワルツというジャンルは現在、大変普及していますが、その認識は「ウィーンの民族音楽だろう」とか「舞踏用の実用的音楽であるべし」などという勝手なイメージで語られることも少なくないかと思います。ワルツそのものの歴史は他に譲ることにしますが、少なくともショパンの生きた時代にはすでに社会的に認知されており、ショパンも物心がついた頃には特に意識することなく耳にしていたことでしょう。ショパンの手紙には「(君に)ワルツを送る」という言葉がよく出てきます。マリア・ヴォジンスカとの別れを惜しみ、彼女のアルバムにしたためた「別れの円舞曲」は日本でも大変人気があります。このようにショパンがワルツを創作するという行為は、言葉を話すのと同じくらい自然で、ジャンルという枠組みを特に意識することもなく、マズールではない3拍子の音楽は便宜上そこに収めておくといった程度の、いわば「楽想のメモ」のようなものだったのかもしれません。

ショパンが作曲したワルツは、話だけのものや真作かどうか疑わしいものを含めて現在までに38曲確認されています。内、没後も含め作品番号が付いてるものに作品番号の無いホ短調(作曲年:1830、初版:1868,J.Kaufmann、自筆譜:ワルシャワ、カウフマン蔵、自筆譜:行方不明)を加えた14曲が昔はワルツ集として一般的でした。さらに、
ホ長調(作曲年:1829or1830、初版:1871,W.Chaberski、自筆譜:紛失、コピーがコルベルグのアルバムに収録)
変イ長調(作曲年:1826〜1830、初版:1902,Breitkopf&Haltel、自筆譜:エミリア・エルスナーのアルバムに収録されていたが紛失)
変ホ長調(作曲年:1826〜1830、初版:1902,Breitkopf&Haltel、自筆譜:エミリア・エルスナーのアルバムに収録されていたが紛失)
変ホ長調 SOSTENUTO(作曲年:1840、初版:1955、Francis,Day&Hunter,LTD、自筆譜:パリ・音楽芸術学院)
イ短調(作曲年:1843、初版:1955、Richard-Masse、自筆譜:パリ国立図書館[BN=Bibliotheque Nationale])
の5曲を加えた計19曲が現在は一般的になっています。この19曲はHenle版に収録。エキエル版でもA/Bシリーズで合計19曲収録されます。

残り19曲の内訳:
20.ロ長調(作曲年:1848年10月12日、未出版、マダム・アースキン蔵)
21.ハ長調(作曲年:1831を横線で消して1824、未出版、イエンジェイェヴィチョーヴァの写本[1248]、ワルシャワショパン協会蔵)
22.ハ長調(作曲年:1826、イエンジェイェヴィチョーヴァの写本[1249]、ワルシャワショパン協会蔵)
23.変イ長調(作曲年:1827、イエンジェイェヴィチョーヴァの写本[1250]、ワルシャワショパン協会蔵)
24.変イ長調(作曲年:1829or1830、イエンジェイェヴィチョーヴァの写本[1251]、ワルシャワショパン協会蔵)
25.ニ短調(作曲年:1828、イエンジェイェヴィチョーヴァの写本[1252]、ワルシャワショパン協会蔵)
26.変ホ長調(作曲年:1829or1830、イエンジェイェヴィチョーヴァの写本[1253]、ワルシャワショパン協会蔵)
27.ヘ長調:ティテュス・ヴォイチェホフスキのために(作曲年:1826or1827、イエンジェイェヴィチョーヴァの写本[1254]、ワルシャワショパン協会蔵)
28.イ短調:ウビャンスキ(?)伯爵夫人のために(コビラニスカ[?.528p]によると作曲年:1824年8月24日付けのシャファルニア通信の中にあるとされ、ドミニカ・ジェファノフスキの証言が記載されていますが、波・仏の書簡集にはこのワルツのことに関して載っていませんでした。自筆譜:不明)
29.調性不明:ティテュス・ヴォイチェホフスキのために(作曲年:1830年5月15日付けの手紙に書かれている、自筆譜:不明)
30.調性不明:家族のために(作曲年:1830年12月22日クリスマス前の祝日、水曜日の手紙に書かれている、自筆譜:不明)
31.調性不明(M.A.Szulcaの本の中に書かれているようです。未確認。自筆譜:不明)
32.調性不明:Breitkopf&Haltelのために(未発表の刊行物があるようですが詳細は不明。以前はヴィエニャフスキ(?)が所有、自筆譜:不明)
33.調性不明:若い頃の作品(アレクサンダー・コプティアイェフ(?)が発見したらしいですが詳細不明)
34.調性不明:(作曲年:1832年、パリの古美術オークションのカタログにあった、詳細不明)
35.調性不明:(作曲年:1842、モスクワのシェメノフスキが発表、詳細不明)
36.調性不明:(作曲年:1845年5月17日土曜日、有名なワルツの他にもう一つあったとされますが、何を指すのか等詳細不明)
37.調性不明:(作曲年:1847年、原稿を発見とM.Karlowiczaの本に書かれている)
38.嬰ヘ短調 Valse Melancolique:(真作か疑わしい原稿が1963年以降ワルシャワのショパン博物館に保管されています。その原稿にはLentと記入されています。出版:1932年 Schroeder & Gunther,New York、1983年 Le chant du Monde, Paris)

Dwa zapomniane utwory/PWM EDITION
Dwa zapomniane utwory/PWM EDITION ソステヌート及びイ短調のワルツを収録。

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